「室井さん。」
湾岸署仮眠室で、室井は目を覚ました。
汗を掻き、熱い身体はベッドから持ちあがらない。
「汗かいてる・・・夏ですからね。クーラーいれてくれればよかったのに。」
小百合はクーラーのリモコンを探し、スイッチを入れた。
「もう時間か・・。」
「はい。真崎さんと交代ですね。」
「ん・・ありがとう。」
なんとか身を起こすと、室井はふらりと会議室へ戻っていった。
最近室井の担当は小百合になり、結局は真崎と付き合っている小百合と 少しは言葉も交わすようになっていた。
真崎と交代しても、捜査員から何も情報は入らない。
時々マイクに向かっては、張り込み中の捜査員に呼びかける。
これで何も動かなければ。捜査本部は解散、室井ははれて辞職の道を選べると言うわけだった。

室井が警察を辞めようと思ったきっかけは、体調のことだった。 体調の不調はそれほどでもない。しかし胸がつぶれそうに苦しい。
もう辞めよう。
そう思った時、どれだけ気持ちが楽になったことか。
その夜、捜査本部は解散、室井は翌日、警察庁に辞表を持っていった。


警察を辞めて一週間、室井は沖縄に来ていた。
その後は秋田に帰り、親の脛をかじりながら生活するつもりだった。
青い海がどれだけ癒してくれるか、室井は感じていた。
ビーチで泳ぐ人々を眺め、室井は気を楽にしていた。
もう殺人事件に振り回されることは無い。