おしごと



「ですよね。」
県警本部の仕事がしたい青島だったが、なかなか呼ばれない。
県警は県警で、優秀な人材がそろっていて、青島だって捜査協力はなかなかない。
そんななか、室井が引っ張ってくれて、室井と一緒に行った建物があった。
オフィス・マルイチ。
警察OBがやっている探偵事務所だった。
「室井です。こちらは青島。」
青島は頭をさげた。
聞くだけでいいと言われてたので、大人しくしていると、資料をもって 探偵がやってきて、室井はその資料を受け取り・・・それだけだった。
室井は青島に、今手がけている事件の内容を特別に教えてくれたのだが、 青島は結局運転も何もしないままだった。
県警本部の人の運転、快適、なんて言っただけで。
「暇なら広島南署に休暇願いを出すといい。」
「休暇か・・じゃあそうします。室井さんにも言われたんで、って言っておきます。」
室井は捜査本部が解散しない。なので、青島は一人でぶらりと東京に戻ることにした。


「やっぱいいな。」
台場に来ると、気分が高揚する。
さっそく湾岸署によると、すみれと雪乃がいた。
「青島さん、もう戻ってきて。」
「やっぱり向こうも首よね、青島君。」
「ちがうよ、でももう休暇だよ。」
「いいじゃないですか。一緒にご飯食べに行きましょう。」
雪乃の席に行き、食べ物ガイドを見る青島。
「ゆっくりしていってください。」
「今日は今からスリの張り込みなの。今度来たら一緒に行こうね。」
すみれは鞄を持って歩いていった。
「私、結婚して良かったのかな。」
「真下がどうかした?」
「ううん。幸せにしてくれるの。」
「じゃあいいじゃない。」
青島は周りを見まわした。誰か事件のこと言わないかな?
「青島さん、何探してるの?」
「仕事。なんかない?」
「広島に逃げてる犯人もいるかも。写真見る?」
「写真か・・・。」
指名手配犯の顔写真なんて、見たくないような。
「今度広島に逃げてそうなやつ、メールで送って。暇なんて嫌だよ。」
「そうですよね。」
雪乃は青島を慕ってくれて、だから仕事も回してくれる。
すみれだって、頼めば資料だってなんだって回してくれるよ。
「時々出張していい?」
「空出張は駄目ですよ。」
「あはは、そうね。」
台場を観光してホテルに戻ると、室井から電話があった。
「台場はどうだ?」
「やっぱこっちのほうがいいですね。」
「そうだろうな。でも広島も悪くない。」
「室井さんもいるしね。広島から東京に逃げてるやついないか調べますね。」
「そうか。ところで、君がいないと寂しいな。食事、一緒にしたい。」
「そうですか。もどったら、ぜひ。」
「君以外も誘ってみよう。」
「ホント?友達が増えるのは嬉しいですよ。」
「君ならそうだろうな。」
「室井さんも増やしてよ。」
「ぜひ検討する。」
室井だって声をかけないわけじゃない。でも結果として、一緒に行きたいなんて言ってくれる人はいないだけだ。
「署長でも誘うか。」
真下のように若い署長。室井にだって、誘えるはずだ。
電話を入れると、OKの返事が出た。やはり嬉しいと思う。
青島と会って、増えた会話の数。署長にも聞かせよう。
広島南署のニューフェイスはどうかな。


青島は、いつまでも台場には居なかった。
今は、広島南署の署員で、雪乃に頼んだ写真を見て、雑踏にでも立ったりしなければ、と戻ってきていた。室井にも悪いし、休暇も終わりだった。
次々と分かる、自殺者の中にいる犯人達。
逃げて、他県で働き口を探そうとして、朽ち果てて。
こんな結末は無い方がいいのに。
青島は他県の自殺者も照合するように、もう一度警視庁に働きかけ、そして また室井に電話してみた。
「うん・・・・わかった。」
空き家の捜索、付近の聞きこみ、鍵のかかったままの家の中で死んでいる年寄りの発見、浮浪者の身元確認。
明日からやらなければならないことのすべてを頭に思い描き、気合の充実した顔をして。
「捜査、頑張りましょ。」
青島と室井は約束する。かならず、事件を解決していこうと。

そして、空は闇に包まれていく。